公式Blog70→追悼加藤武さん。庶民的で……私にアドバイス?

加藤武7月31日死去(86才)。

謹んで御冥福をお祈りします。
加藤さん、徹子の部屋で拝見したときを昨日の如く覚えています。
苦しまずに死ねましたか。苦しまずに死ねたら、取り敢(あ)えずよしとしましょう。でももう少し長生きしてほしかった。加藤さんの件を拙著『日本のフィクサーME』に書いている箇所を紹介します。

 

十一・『徹子の部屋』――ボンとトットちゃんの横綱争い

だんだん、関心を持ってきた布袋さんが、興味津々(しんしん)という顔で尋ねてきた。
「では、最近はどうなの」
「二〇〇四年頃からは、もう明白となったけど、何しろ、日本人ですら膨大なスポーツ選手の数、芸能人の数、学者の数、政治家の数、芸術家の数……とのご対面だ。その上、外国人もそうなんだ。だから、一人一人や一つ一つに丁寧には不可能なんだ。第一TVをつけ転(うた)た寝をしていて、誰か偉い人が出た途端に正座はできないからね。またそんなことをしていたら、僕は何もできないよ。
TVはニュースと政経関連教養番組以外はBGM代わりにつけているだけだからね。それでも国家の要職に就いている人とのご対面は気を遣うよ。尤も、一定の時期から相手の方(外国の要人)がさりげなくとか、見ていない振りをしてくれるから助かるけどね。だから、その後は外国の要人がこちらを注視していても気づかない時もある。それと普段のままで対応せねば三百六十五日×十年以上だから身が持たないよ」
「じゃあ、夏はまたパンツ一枚で」
「原則はそう。徹子の部屋なんて酷(ひど)いもんだよ」
「どんな風に」
「スタニスラフ・ブーニンがゲストで登場した時の話をするよ。二〇一〇年九月十五日もいつものように『徹子の部屋』を見ていたんだ。今日は誰が出るのかと思っていたら、ブーニンが出てきたんだ。ブーニンを見ると見事な正装をしていた。それに併せて黒柳徹子も華麗な服装をしていた。その時、僕は暑いのでパンツ一枚だったんだ」

当時の実況中継をしよう。
――☆☆☆(TVの中で)☆☆☆――
黒柳徹子が言う。
「今日の徹子の部屋のゲストはスタニスラフ・ブーニンさんです。
一九九五年、ショパン国際ピアノコンクールで優勝し、世界的ピアニストとして日本でも大フィーバーとなったスタニスラフ・ブーニンさんがゲスト! 奥様は日本人です。
『徹子の部屋』には二〇年ぶり二度目の出演。
好きな食べ物はたくあんと梅干。テレビで見るのは時代劇!とにかく日本が大好きなブーニンさん。
日本人の女性と結婚し、現在は日本で生活してい……」
と、言いながら、黒柳徹子がTVから私をふと見た。その時、私は上半身は裸で下はパンツ一枚で、柱に片足をあげ、テレビを見ていた。すると正装の二人が出て来た。プーニンは驚き、黒柳徹子は笑いを必死で抑えていた。黒柳徹子はTVのため笑ってはいけないと我慢するが、私の方を見る度(たび)に可笑しくてかなわないし、笑うと他の視聴者に何の事か分からないし、で必死で我慢していた。私の方は暑いから服を着たくないし、それにここで服を着ると過去に裸で見た人に失礼になるので筋からも着られない。
――☆☆☆(TVの中の場面終了)☆☆☆――

「しかし、プーニンの演奏は見事だったね。徹子の部屋で〝てっつぁん〟(黒柳徹子)は独り占めなんだから、あれでは徹子の部屋を止(や)めたくないだろうね」
「でも、ブーニンはびっくりしただろうね」
「呆気にとられたような顔をしていたよ。黒柳徹子は笑いを抑えていたけどケロッとしていた。ブーニンの方は恥ずかしくて僕の方を見られないようだった。それで、僕も部屋の中でも服装を整えようか、それをすると過去の人への失礼に当たることや、僕はTVから見られることに合意していない意思表示のため、このままで行くか迷い出したよ」
「で、結局その後どういう方針をたてたの」
「迷いながら、例によって、別の日にチラッと『徹子の部屋』を見ると、何とも言えない風貌(ふうぼう)のおっさん三人がヨレヨレのジャンパーを着て出ていたんだ。裸ではないけど、これは僕よりも酷いとびっくりし、TVを切り替えたよ。誰なんだろう、と気にはなったけどね。確か二〇一一年一月三十一日の番組だった」
「で、その三人組って誰だったの」
「翌日も、徹子の部屋を見ると例の三人組が出ていた。見ると加藤武氏、小沢昭一氏、永六輔氏だったよ。だけど三人とも服装だけではなく、風貌や雰囲気も凄かった。簡単に言えば、まるで布袋さんと明神君とハカセの三人がいるようなそんな雰囲気だった」
「その三人は全員早稲田大学に関係しているから、ボンの先輩だよ。ところで、服装が酷かったというけど、どの程度なの。ボンと比べてどうだったの」
「僕の服装と同等か、僕より少しマシかという所かな」
「それでは、相当ババッチイネ。徹子の部屋は良く見るの」

……

 

 

【2015年8月1日】今から、考えると、TVを前に私の服装をどうするか迷っていた時期に、アドバイスしてくれたのかもしれません。加藤さん、小沢さんはなくなられましたが、永六輔さん、長生きしてください。三人とも庶民的で、人情味があり、大好きです。